医師からのお話し
翌日、気が重いなと思いつつ一人で2時間高速を飛ばし実家に戻る。
郵便を取り込み、なんだかんだしていると弟の嫁がばったり来た。少し話し、病院に向かう。
母はいつもと変わらずだるそうに横になっている。差し入れを渡し、話していると看護師が呼びに来た。
主治医の医師と1対1での面談。
まず抗がん剤を開始し、副作用が強く、点滴の抗がん剤を実施できない事を伝えられた。今の内服だけでは十分な治療とは言えず、家族でいつまで続けるか決めてほしいと。そして今後家に帰るのか、違う病院にうつるか、決めてほしいこと。万が一なんかあった時延命処置をするかを話すように言われた。
聞こうか一瞬戸惑ったが…聞かずにはいられなかった。『余命は?』とやっとの質問だった。
1、2ヶ月との返事だった。
ショックを受けるわけではなく、落ち込むわけではなく、時間がない!と焦りだけが襲ってきた。ふと時計を見る、やば!もうすぐ16時だ!先生に頭を下げるとすぐに母さんのとこへ。どこに退院したい?とだけ聞く。『退院?家…だけど痛いの怖いから緩和の病院かな…』とぽつり。私が家で専属看護師さんして、緩和もするって言ったら家?って聞くと『家!』と笑顔になった、あの子供が欲しいものを買ってもらったような笑顔は可愛かった。でもふときづいたらしく『でもえりちゃん仕事…』と言われだがそんなん無視して5時までで相談室閉まっちゃうから行ってくるとダッシュで向かった!
なんの予約もしてなかったが父が顔合わせをしてくれていたのでスムーズに話が進んだ。とにかく時間がないんですと泣きつき、なにをしたら良いかと聞き、メモ。往診医もたまたまパートナーさんが漢方や民間療法やってるって教えてくれたとこを発見。しかし地域外って事で相談すると言ってくれた。他もよくわかんないけどケアマネやら訪問看護やらを決めた。
病棟に戻ると17時、あとやらないといけないことは…と医師の説明のときのメモを見る。治療をいつまでするかと延命治療…
これは…弟とパートナーさん呼び出しやと弟にメールする。1時間で来れるとのこと。パートナーさんは仕事で調整付かないとのことで電話で要点を話す…いや話さないといけないんだけど優しい声を聞いた瞬間ぷつっと自分の糸が切れた。急に泣き出した私に戸惑われながらも先生の話を伝えた。今から弟も来るから本人の意向を確認することを伝えた。今在宅医療に向けて手続きをしたことを伝えるとその状態でかと心配される。パートナーさんの意向はあるようだが母に任せたと言われ、そろそろ弟が来るから、泣いた状態見せたくないからと電話を切り、トイレで顔を洗う。ひどい顔だ。
母のとこにいったん戻り家に帰るよー!準備してくる!と書類をロビーで書くことを伝えすぐに退室する。ロビーにいるとすぐに弟が来てくれた。先生からの話を伝えこれから母の意向を一緒に確認しに行こうと伝える。ポカーンとした弟の顔。そうだよね、そうなるよね。と思ってたら先生が来てくれた。補足することはないか質問されあっ!もしかしてもっと弱い抗がん剤があるのではと期待もしつつ聞いてみるとすでに今やったのが一番弱いものとのこと。
さらに弟を絶望的な顔にしてしまった…
一息ついたとこで母のとこに向かう。
先生にどうするか決めてほしいと言われた事がいくつかあると伝え、質問していく…
飲み薬、やめてもいいって。どうする?って聞くとすぐにでもやめたいと。あぁ、そんなに苦しかったんだ、頑張ったね。
退院先は家でいいよね?ときくと家に帰っていいなら…と。もちろんだよ。
延命処置は?と聞くと何もしなくて良いと、思わず呼吸器と心臓マッサージだけでなく点滴とか注射は?何もいらない、しなくて良いと静かに強い意志で話す。万が一吐血とかしたら胃カメラは?と聞くとあれ、苦しかったからもうしたくないっと、だだっ子に見えてきた。
弟も今決めた事に了承し、看護師に伝えにいく。しばらく家族で話し、弟と玄関に向かった。